親族の失踪体験

            

私の母親の弟は失踪しました。現在生きているとすれば70歳近くになると思います。
叔父が失踪した当時は私はまだ産まれていませんでしたが、母から聞いた話を思い出してご紹介します。

母親は昭和20年代に九州に産まれました。母の兄弟は兄と弟、姉の数人でしたが当時はコレラ菌の流行と事故死で殆どが亡くなっています。
運良く私の母と母の弟である叔父が生き残りました。

やがて団塊の世代は近所や友人とともに大阪市や名古屋市へと集団で上京し、母は実家を出て大阪市に住むことになりました。
叔父はというと、船に関する仕事で実家を離れ離婚歴のある子供がいる女性と結婚していました。
しかし、叔父の奥さんと叔父の母親の嫁姑関係は上手くは行かず、後継の叔父は実家を離れてしまいました。

ちょうどその頃、母親は上京先から別の地域へと嫁ぐことになりました。
結婚式には叔父も出席していたそうですが、この出来事のあと叔父は姿を消してしまったのです。
叔父は母親のことを、羨ましいとだけ言い、母親はいつまでも実家に帰らずに、奥さんの元で暮らし実家の生計の見通しがたたない叔父を強く叱りつけたと言います。

私が幼い頃から大人になるまでの間に、母親の実家へと帰るたびに近所の住民が同情をして家を訪ねてきました。
叔父の失踪当時は、祖父は隣人に捜索を懇願し、祖母は言葉を話さなくなったと言います。

当時はまだメディアで失踪者の捜索依頼がなかった時代でした。
私が20歳の頃に母親の口から、弟もきっとどこかで生きているだろうという言葉を聞きました。

母親の結婚式には我が家に来ていた叔父の写真は何処か寂しそうな表情で写っていました。おそらく九州から一人で遠く離れた田舎へと式の出席のために来坂した叔父は
寂しかったんだろうと思います。母が九州から大阪へ上京しなければ叔父は失踪せずに、私は会えていたのかもしれません。

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